

就業規則を変更するとき不利益変更に注意するよう聞いたんだけど、何を注意すればいいですか?

従業員が今より不利になる内容に変更するときは
合意を得たほうがいい場合もあります。変更内容にも注意が必要です。
今回は就業規則の不利益変更について、手続きや注意点を解説します!
就業規則の不利益変更とは?
社会情勢の変化で業績の悪化などで、就業規則を変更せざるを得ない場合もあります。
就業規則の不利益変更とは、労働条件を労働者にとって今より不利な内容に変更することです。
就業規則の不利益変更:裁判例

過去には定年制度の変更や退職金の廃止をめぐって裁判になった事例もあります。どういった場合に就業規則の不利益変更が問題になるのでしょうか。
ここからは、就業規則の不利益変更に関する裁判例を3つ紹介します。
裁判例①:秋北バス事件
秋北バス事件は、主任以上の役職にある社員を対象に新たに55歳の定年制を新設する就業規則の変更をした事例です。
判決では、本人の同意のない一方的な不利益変更であっても合理的であれば労働者を拘束するものという見解が取られました。
裁判例②:協愛事件
協愛事件は、退職金の減額、退職金の廃止と複数回変更した事例です。
この事例では、労働者の同意を得て変更をしていたものの同意として認定されませんでした。
変更自体も合理的な理由のないものとして就業規則の変更を無効とし、退職金の支払いを命じる判決となっています。
形式的に同意を得れば、不利益変更が認めらるわけではないということです。
裁判例②:東武スポーツ事件
東武スポーツ事件は、有期契約への変更、賃金の減額、特別休暇の無給化など様々な労働条件の不利益変更をした事例です。
変更について説明があったものの、社報の回覧や短時間での口頭説明だけでした。
この説明だけで労使間の合意が成立したとは認めることはできないとされました。
就業規則の不利益変更の注意点

裁判例①:秋北バス事件では合理的な内容であれば就業規則の不利益変更も有効であるとされています。
裁判例②:協愛事件、裁判例③:東部スポーツ事件では、不利益変更の内容を従業員にも理解してもらったうえで同意を得ることが求められています。
こういったトラブルのリスクを減らすために、具体的にどのようなことをすればよいか解説していきます。
注意点①:合理性
不利益変更が合理的かどうか、労働契約法10条をもとに次の基準で判断をします。
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況
- その他の事情
具体的には、上記の判断基準をもとに次のような点で注意しましょう。
- 賃金の大幅減額など不利益の程度は大きくないか
- 変更せざるをえない経営状況にあるか
- 世間相場と比べて著しく低くないか
- 変更の手続きは正しく行っているか
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
参考・引用元:労働契約法
注意点②:同意を得るための説明
就業規則の不利益変更の説明が不十分として、同意が認められないリスクを減らすため、具体的明確に説明しましょう。
具体例としては、次のような方法で手続きを進めることも労使間の誤解防止につながります。
- 社員全体に向けて説明会を行う
- 個別面談を設け、じっくり説明する
- 書面で説明資料を配布する
- 書面で同意の確認をする
就業規則の不利益変更は慎重に検討しましょう

今回は、就業規則の不利益変更について裁判例や注意点を解説していきました。
十分に検討をしないで進めてしまうと労使間のトラブルにもつながるおそれもあります。
ご自身で変更されるときは、今回紹介した判断基準などを踏まえ慎重に進めましょう。
手続きをするなかで判断が難しいものがあれば、トラブルを防ぐためにも社労士や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。